武者修行虎の巻LINKS名人列伝HOME
現代のグレ釣りはスレッカラシを
いかに攻略するかが最大の問題である。
学習した賢い大型の好敵手たちを
仕留めるためには
高度なテクニックが要求される。
鬼才は捨て身の挑戦で挑む。
だからゲーム性が高くおもしろいのだ…。

ブチ切られてもええ。
取れる取れんは後に考えることよ。
それよりや、なんとかしてデカイ憎たらしいのう、
賢い尾長にサシエを食わす努力をするのが先なんや

●プロフィール
1945年生まれ、徳島県鳴門市在住。「グレの鬼才」「チヌの天敵」とまでいわれ、その攻めまくるフカセ釣りは繊細にして豪快。年間釣行回数100日を超え、北は青森、南は沖縄まで日本列島をかけ回る超実戦派。「釣りは明るく楽しくおもしろく」が信条。マンモス釣りクラブ「名釣会」のドン。

鬼才が惚れ込んでいるターゲットはグレの中のグレといわれるパワーとスピードを兼ね備えた尾長グレだ。それもそこそこのサイズではがまんできない。一発でいい。その場その時に潜む特大を狙い撃つことに執念を燃やす。しかし、特大と対決できるスーパーステージでは毎日のようにマキエが撒かれ、グレたちは飽食状態におちいり、昔のような活発な動きをするハングリーな好敵手は極端に少なくなった。これは釣りにくくなったことを意味する。さらに尾長グレは学習しハリの付いたサシエを見破るかのような動きを見せるようになった。そして相手がデカければデカいほど憎たらしいほど釣りづらく賢いのだ。鬼才はそんなスレた特大の尾長グレとの勝負に賭けている……。
 鬼才の持論のひとつに「食わすのが先」というのがある。これはとにかくグレにサシエを食わせてからいろいろと悩んで考えることだということだ。そのために太いハリスを見破られたら、ハリスをブチ切られるのは覚悟で極限まで細いハリスにかえていくのだ。こんな捨て身のアプローチを鬼才はたびたび見せてくれる。これは竿を持てば第一に食わせる努力をすることこそが技の進歩につながるというポリシーの実戦であり、最も大事なところだというのだ。
 では、本当にハリスの太さの違いで食いがかわるのだろうか。浅いタナなら太陽光線でハリスが光るからハリスはさらに太く見えて尾長グレは警戒するらしいが、それより鬼才は太いハリスより細いハリスの方が、ハリスに対して潮流の抵抗が受けにくいので、より自然に流れるという部分にこだわる。つまりハリとハリスのついたサシエと、なにもついていないマキエの流れ方や沈下速度は絶対に違ってくるということだ。簡単にいえば、サシエの動きはマキエの中で目立ち過ぎるということにつながる。こうなると賢いスレッカラシの尾長グレは、サシエの不自然な動きがおかしいと思い警戒心をいっぱい抱き、一気にサシエを口にせず食い渋るように捕食するのだ。こういうパターンになれば当然ウキに出るアタリも小さく読み取りにくくなる。そんなとき鬼才はロッドをうまく操作し何回も道糸の流れる筋を修正し、あるいはブレーキをかけたり素早く送り込んだりして、サシエをマキエに近い自然な流れ方をするように巧みに演出していく。そして海中の仕掛けをうまく張りウキにでる小さなアタリをできる限り、出やすくもっていく努力を惜しまない。

尾長は歯が鋭いから早アワセが基本よ。
アタリがあったら海面下5センチ以内でアワせなアカンぞ。
ハリを飲み込まれたら終わりよ

尾長グレの歯は鋭い。ハリを飲み込まれたらひとたまりもないだろう。デカいほどハリ先は完璧に唇を貫通していないと取り込みはかなり厳しい。だから鬼才のアワセは強烈で素早い。そのかけ引きの瞬間はまさに息をのむような緊張感が漂っている。ウキのヘッドに変化があらわれたら海面下5cm以内でフッキングをかます。まさにこの一撃に賭けるという感じなのだ。
 そして、この電光石火のようなフッキングでキーポイントになるのがウキだというのはいうまでもない。高感度のウキで尾長グレのどんな小さな息吹でもとらえなくてはならないからだ。
 松山―。しょうざんと読む。鬼才がつくる松田ウキファミリーの最高峰である。26歳のときから自作ウキにこだわり試行錯誤を重ねった結果、完成させたのがこのウキである。松山の最大の特長は2段パイプ機構である。従来のウキはシモリ玉がウキのヘッドで止まるが、2段パイプ機構をしている松山はシモリ玉とその上に位置するウキ止め糸がウキ内部にすべり込み、ウキの下部の穴から4〜5mmのところで止まるのだ。これは従来のウキならヘッドでシモリ玉が止まり支点が高いためウキがふらつたり、ブレたりするが、松山はウキを抑えるシモリ玉が内部の下部で止まるので、低重心の支点となり波の動きにあまり左右されず潮流に対しても食いつきがいいのである。すなわち食い渋る尾長グレのアタリが取りやすいというわけだ。
 さらに、松山にはこだわりはまだまだある。素材は和桐、表面は極薄うるし塗装、内部に仕込まれた鉛は安定感をさらに高めるV字型、ヘッドの形はアタリが取りやすく海中の仕掛けの方向性が分かりやすいソロバンヘッド、そのヘッドにはSICリングがセットされて道糸のスベリをよりスムーズにしてくれるのだ。

魚ちゅうのはなあ、エサを食うときに一番警戒するんよ。
それでウキは大事なんよ。
ウキがなあ、海の中を教えてくれるんよ。頼もしいやつよ

鬼才のウキ使いは実にシビアだ。ウキを巧みに操ろうと思えばどうしてもオモリをうまく使わなければならない。その証拠に松田ウキファミリーのすべてのオモリ負荷表示が2つの文字で記されている。こんな表示をしたウキは他にない。たとえば2―BBと表示してあれば、基本的に2(ジンタン2号)がハリスに打つオモリ、BB(ガン玉BB)が道糸とハリスの直結部に打つオモリだ。もちろん表示がひとつであればオモリひとつだけ。鬼才はハリスに打つオモリを「食わせナマリ」、道糸に打つオモリを「落としナマリ」と呼んでいる。
 しかし、これはあくまでも基本の打ち方だ。大自然を相手にする釣りはいつも同じ状況でアタックさせてくれない。だから状況に合わせてオモリの打ち方をかえていかねばならない。そんなとき鬼才は小さなジンタンオモリを絶妙にプラスさせて対応していく。そのオモリ使いはめまぐるしくかわる。刻々と変化する状況にシビアに合わせていくのは見事というほかない。これもすべては尾長グレの息吹をウキで確実に取ろうというあらわれなのである。鬼才の気迫なのだ。そんな鬼才がずっとあたためてテストを繰り返していた最強バージョンが松山に加わった。より見やすくより的確に小さなアタリを取るために松山が進化した。構造はまったく同じだが、ソロバンヘッドの色を2色にさせていっそう視認性を高めたのだ。日中は白色と朱色、マズメ時や曇天や雨には黄色と朱色を使う。その名はピエル――。これで鬼才はまたもパワーアップした。特大の尾長グレのために……。

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